スタジオヘッド塩川の創遊話 ~DSS制作スタッフインタビュー~ 第3回 『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』開発チーム

DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios(略称:DSS)スタジオヘッドの塩川洋介が自らDSSの制作スタッフや、制作にご協力いただいたクリエイターにインタビューを行う「スタジオヘッド塩川の創遊話 ~DSS制作スタッフインタビュー~」。

第3回目は、ディライトワークスのオリジナルボードゲーム『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』に携わった開発チームが登場。同作は、2018年4月新卒入社のクリエイターたちを中心に企画・開発され、2018年11月に開催されたアナログゲームの祭典「ゲームマーケット2018秋」で初めて販売し、当初の想定を上まわる反響をいただき完売。本稿では、制作に携わった新人クリエイターたちが制作舞台裏やこだわった要素について語った。

自分たちは一体どんなゲームを創りたいんだろう

塩川:ディライトワークスのオリジナルボードゲーム『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』が3月10日より一般販売を開始するということで、今回はそれを記念して、制作に携わったメンバーに色々とお話を聞いていきたいと思います。

一同:よろしくお願いします。

塩川:早速ですが、タイトルの“CHAINsomnia”(チェインソムニア)はどういう意味なんでしょうか?

青山:『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』の世界では、アクマによって「夢の城」に連れ去られてしまうと、魂がそこに閉じ込められて眠りについたまま目が覚めなくなってしまうんです。でも、夢の世界では子どもたちはアクマに怯えながら城の中をずっとさまよい続けているんですね。そういう出口の見えない不安や怖さを表現できる言葉は何だろうと考えて、“Insomnia(不眠症)”という言葉に行き着きました。

言葉の意味は真逆のようですが、眠れない夜というのはやはり誰にとっても早く抜け出したい「夢の城」じゃないかと思ったんです。そして、ゲーム上では恐怖の象徴として「クサリ(鎖)」という要素があるので、2つの言葉をミックスさせて“CHAINsomnia”という造語をタイトルにしました。

塩川:世界観が伝わる良いタイトルですね。

青山:ありがとうございます。皆で考え抜いたタイトルなので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです。

塩川:「創遊話」の第1回目では監修を務めてくださったカナイセイジさん(※)をお招きしたのですが、その時に、青山さんたちは創りたいゲームがはっきり見えているようだったと仰っていましたよ。

※カナイセイジ…ボードゲームデザイナー。2014年にカードゲーム『ラブレター』でドイツゲーム大賞 4位に輝き、これが日本人初の受賞となった。ディライトワークスとのコラボレーション作品『The Last Brave』でゲームデザイン、『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』では監修を務めた。

青山:いえ、最初は全然わからなかったんです。自分たちは一体どんなゲームを創りたいんだろうって。ボードゲームを作った経験があるのも田谷さんしかいませんでした。

田谷:それで、まずはメンバーが一人ずつ企画を持ち寄って、アイデアを出し合うことにしました。『人狼』のようなコミュニケーションが主体となるタイプや、生き残りを懸けて戦うバトルロイヤル系まで、出てきた案は色々でしたね。

塩川:なかなか1つに絞り込めないと。

青山:そうなんです。考えが湧いては消えて、湧いては消えて……という感じで。でも、行き詰まりそうになった時にカナイさんと白坂さん(※)がいつもアドバイスをくださって、段々と軸が定まっていきました。僕たちはディライトワークスのクリエイターなんだから、ディライトワークスらしいゲームを創ろうじゃないかと。

※白坂翔…世界中のボードゲームをプレイできるボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」のオーナー。ディライトワークス社内にあるボードゲームカフェのディレクションも担当している。『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』ではカナイセイジ氏と共に監修を務めた。

田谷:『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』の原案は青山さんのアイデアなんですよ。ディライトワークスの代名詞とも言える『Fate/Grand Order』を参考にディライトワークス“らしさ”を考えたりもしました。そうして世界観を設定することや、キャラクターの個性と連動したスキル、そして、協力という要素を採り入れました。誰かが誰かに力を貸すこと、時には自分が犠牲になることもいとわないというところからストーリーや感動が生まれるのだと考えました。

塩川:創りたいモノが見えてきた?

青山:そうですね。やっと道が見えてきたような気持ちでした。それからはあまりブレずに迷わなくなったと思います。

キャラクターの制作過程

塩川:世界観やコンセプトを構築していく工程を経て、それを実際に表現する段階に進んできますが、デザインを担当したのが角谷さんと鄺(コウ)さんですね。

角谷:はい。私は主にキャラクターとパッケージのデザインを担当しました。

鄺:私は角谷さんが描いてくれたイラストにカラーリングを施して、全体的な仕上がりを調整するという役割でした。パッケージデザインではタイトルのロゴをデザインしています。

塩川:アクマやクサリというような怖めの要素もある中で、パッケージは意外にも可愛らしいデザインになっていますね。どのように決まったのでしょうか?

角谷:当初はもう少しホラーテイストの雰囲気を考えていました。ただ、あまりにおどろおどろしい感じに演出してしまうと、やはり取っつきにくさが目立ちます。この辺りの温度感は鄺さんと何度も話し合ったのですが、怖がらせることが目的なのではなく、プレイヤー同士が自然に連帯感を抱けるようにするための恐怖演出が必要なんだ、というポイントに気が付いたんです。

キャラクターも、ファンタジー色を濃くして、プレイヤーが思わず応援したくなるような可愛らしさを目指しました。思い切ってデフォルメしたデザインにして良かったと思います。

鄺:角谷さんの描くキャラクターはとても生き生きしていて、ゲームの世界観をグッと広げてくれるんですよ。私も非常に刺激を受けました。タイトルロゴには城、鎖、悪魔の角といった不気味なモチーフを織り込んでいますが、角谷さんのキャラクターに合わせて、暗い雰囲気を保ちつつも可愛らしさのあるデザインをしました。

田谷:僕もそうでした。角谷さんの描いたキャラクターを見て、ゲームデザインのアイデアが膨らんだところがあります。

塩川:キャラクターの制作過程でゲームの仕組みに磨きがかかった部分があると。

田谷:はい。インスパイアされた部分は大きいですね。

塩川:カナイさんが、皆さんの秘めている可能性を感じたと言っていたのが、アイザックのプレイヤーボードを見たときだったそうです。AP(キャラクターの行動力)を示すマークが足跡になっているんですが、キャラクターの履き物に合わせて足跡が一つ一つ異なっています。

その中で、アイザックだけは車椅子で移動するので、足跡ではなく車輪の軌跡が描かれています。その部分に、カナイさんはとても感心していたようです。

▲制作中は、カードデザインを紙に印刷し、段ボールの切れ端に貼り付けては、繰り返し遊びながらルールの確認や面白さなどを検証したとのこと。
写真は実際に使われていた段ボールでできたカード。

田谷:そこも角谷さんが気付いてくれたんですよ。僕が何となく足跡のマークばかり思い浮かべていたところに、「アイザックは歩けないよね」と言ってくれて。

青山:そう考えると、ライアンにはライアンの、シャーロットにはシャーロットの足跡があるはずで、体格や生まれが違えば、服装も履き物も当然違ってきます。時代背景とキャラクターに思いを巡らせると、やはり世界観に奥行きが出てきますし、ゲームの要素も世界観にさらに寄り添ったものへとどんどん改良されていきました。そこは僕自身も少なからず驚きを覚えたところです。

塩川:大きな気づきですね。

「やっぱり止めよう」

塩川:チームで制作してきましたが、チームだからこそ為し得たこと、反対に、チームだからこそ難しかったことは?

角谷:私は鄺さんのバックアップにすごく支えられました。鄺さんのお陰で安心して描けたと思います。

塩川:詳しくお聞かせください。

角谷:私たちが制作したのはキャラクターやパッケージデザインだけではありません。城タイルなどの各種コンポーネント(部品)、細々としたアイコンなども含めるとかなりの点数になりました。それらひとつひとつはシンプルで、デザインも簡単そうに見えるかもしれません。けれど、量産するとなると話は全然違ってくるんですね。多種多様なモノを創りながら、同時に統一感も維持しなくてはいけません。これがとても難しいのですが、そこを鄺さんが一手に引き受けてくれました。

塩川:鄺さんが“縁の下の力持ち”だったと。

角谷:はい。鄺さんがクオリティとテイストをしっかり担保してくれていたからこそ、その分私は自由に描くことができました。クリエイティブのレベルを本当の意味で引き上げたのは鄺さんの功績なんです。

鄺:そんな風に思ってもらえたら、すごく嬉しいです。

塩川:逆にチームでの難しさを感じたことは?

青山:僕の出した案が途中でボツになりました……(苦笑)。

立山:おぉ……。それはつらいなぁ。

青山:実は、僕が最初考えていたのは非対称型の脱出ゲームでした。プレイヤーのうち1人がアクマ役で、他の数人が逃げるという形です。

塩川:完成版のゲームデザインとはかなり遠いところから出発していた、ということですか?

青山:今思えばそうですね。当時は何となく行けそうな予感があったのですが、結局はひどく遠回りになってしまいました。ミーティングでも段々と行き詰まっていって、アイデアを出すほど面白さが失われていくという苦しいスパイラルに陥った時期もありました。

塩川:モノ創りの苦しいところですね。

青山:みんなで色々悩んだ末に、苦境を打開するきっかけを作ったのは田谷さんでした。田谷さんが「(非対称型の脱出ゲームは)やっぱり止めよう」って(苦笑)。

塩川:青山さんの中できちんと納得できたでしょうか?

青山:今はもう。残念な気持ちが全くないわけではありませんが、変に空気を読み合って意見を言わずに、ゲームのクオリティが落ちるよりはずっと良いですから。

塩川:クリエイターには時に精神的なタフさも求められますので、良い経験でしたね。

田谷:こういう苦労を挙げたらキリがないくらいですが、皆さんのお陰で僕たちは何とかエンディングまで創りきることができました。本当に感謝しかありません。

塩川:『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』には、ボードゲームでは珍しくエンディングがあるんですよね。

田谷:はい。ボードゲームは何度も繰り返し遊べるという魅力がありますよね。でも、1度しか味わえない感動や面白さというのもあると思うんです。花火のようにその場限りだからこそ、心動かされるというか。『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』ではそういう思想を採り入れて、このエンディングカードで表現しています。エンディングはコンシューマーゲーム機のRPGから影響を受けたところもありますね。

塩川:エンディングの内容は……。

青山:それはプレイした方だけの秘密です。プレイしてみてからのお楽しみということで!(笑)

一人でも多くの人に届けるために

塩川:紆余曲折ありながらも、こうして『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』は完成しました。その先にあるのが、お客さまに届けるという仕事です。ここからプロデューサーの出番ですね。

立山:はい! ゲームの販売の準備などはDSSのプロデューサーや宣伝チームが担当しました。

塩川:「難易度MAX!?永遠に覚めない悪夢から生還せよ!」がキャッチコピーですが……なぜあえて難易度が高いことをキャッチコピーにしたのでしょう?

立山:確かに、難易度が高いことをキャッチコピーにすることには、お客さまが手に取りにくくなる可能性もあり勇気がいりました。ですが、お客さまにお伝えするべきこのゲームの面白さの本質が何かを考えたとき、このキャッチコピーにたどり着きました。

塩川:難しさが、面白さでもあると。

立山:はい。『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』を初めてプレイした時、僕は脱出することができませんでした。2回目で何とか脱出できたものの、本当のクリアには届かず、夢中で何度もプレイしました。可愛らしいイラストに反した難易度のギャップこそ良い意味でお客さまを裏切る面白い要素だと考えています。

塩川:監修の白坂さんにもご協力いただき、JELLY JELLY CAFEさんで先行試遊会を実施するなど、情報発信にも力を入れていましたね。

立山:みんなが苦労を重ねて完成させたゲームのクオリティの高さを、たくさんの方に知っていただくために、まずボードゲームファンの方々にプレイをしていただきたいと思いました。発売のタイミングも、ボードゲームファンの方々が集まるイベント「ゲームマーケット」(※)以外ないと、最初から決めていました。

※ゲームマーケット…国内最大規模のアナログゲームの祭典。2018年秋(2018年11月24・25日)にはディライトワークスが初出展し、オリジナルボードゲーム『The Last Brave』と『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』の先行販売を行った。

ボードゲームファンの熱量が実現させた一般販売

塩川:「ゲームマーケット2018秋」に出展しましたが、振り返ってみていかがですか?

立山:当日は制作チームのみんなにもブースに立ってもらい、レジ打ちやゲームの説明を行うゲームマスターを担当してもらうなど、このパッケージをお客さまに手渡しするところまで頑張ってもらいました。みんなとっても緊張していましたね。

角谷:レジを打つ手が震えるくらい、めちゃくちゃ緊張してしまいました(苦笑)。

田谷:僕もです。制作中は内容を考えることに夢中でしたが、いざお客さまの反応を目の前で見ることになるんだと思うと、いろんな不安が頭をよぎってしまって。

青山:でもその不安に反して、アンケートやSNSで「面白かったよ」とか「再販希望!」というコメントがいただけたときは本当に嬉しかったです。自分たちの創ったモノで楽しんでもらえたんだと。改善点のご指摘もありがたいですね。どのフィードバックも非常に勉強になります。

塩川:僕も裏で運営を手伝っていましたが、あっという間に完売となって驚きました。

立山:先行販売の後も『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』はボードゲームファンの方の間でご好評をいただいていましたね。お陰さまでついに一般販売が決定しました!

青山・田谷・角谷・鄺:ありがとうございます!

立山:ボードゲーム界隈では「用意した在庫の半分が売れれば良い」と言われている中、ゲームマーケット初出展で完売御礼となりました。これは本当にありがたいことです。

塩川:「ゲームマーケットで完売できなかったら、一般販売は難しいかも……」と、出展前に立山さんは言っていましたが……。

立山:言いましたね。

塩川:結果、即完売でしたね。

立山:ゲームのクオリティや、自分でもプレイして「良いものを創ったな」と思っていましたし、それもふまえて販売の準備をしていましたが、いやー、それでも私の予想を遙かに超えていました(笑)。ブースの盛況ぶりを見て、急いで本格的に一般販売に向けた準備を始めました。

青山:お客さまに後押しをいただき一般販売を実現することができたと思っています。先行販売でお買い上げいただいた方々、SNSなどで応援してくださった皆さまには本当に感謝の気持ちで一杯です。

鄺:本当に嬉しいです。頑張って創った甲斐があります。

塩川:では最後に、これから『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』を遊ぶ方も含め、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

青山:このプロジェクトが始まった当初は、まだまだゲームとしてもぼやけていましたが、新卒の同期メンバーが力を合わせたことで、純粋に面白いものができたと僕らとしても誇らしく思います。皆さんに楽しんでいただけるようなゲームに仕上がっています。ぜひ、手に取って遊んでみてください。

田谷:パッケージにも書かれているとおり、クリア率12%という非常に難しい脱出ゲームになっています。脱出した先になにが起きるかは秘密ですが、ぜひ手に取って遊んでいただき、クリアして封筒の中身を確認してもらえればと思います。

角谷:ゲームデザインに関しては、皆さん頑張っていたので私としても自信を持っておすすめします。デザイナーとしては、キャラクターはもちろんですが、カードに記載されている文字の段落なども読みやすいようにこだわって調整していますので、そこにも注目していただければと思います。

鄺:角谷さんがデザインしたキャラクターは本当に魅力的なので、ぜひ、好きなキャラクターを選んでプレイしてみてください。

立山:ほかの作品にはない面白い要素が詰まっていたりと、ひとりのプレイヤーとしても本当に面白いボードゲームに仕上がっていると思います。多くのゲームが対戦を軸にしていますが、皆で考えてゴールを目指すという協力型を採用したのは、若い世代ならではの要素だと感じました。

『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』の一般販売は、2019年3月10日(日)より公式オンラインストア「DELiGHTWORKS STORE」と、同日開催の「ゲームマーケット2019大阪」に加え、ホビーベース イエローサブマリン様にて販売されます。これからいろいろな人に届けていけるよう頑張りますので、ぜひ皆さん遊んでいただければと思います。

塩川:今後の活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios