スタジオヘッド塩川の創遊話 ~DSS制作スタッフインタビュー~ 第2回 コミックマーケット95 オリジナルFGOグッズ 企画開発担当

DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios(略称:DSS)スタジオヘッドの塩川洋介が自らDSSの制作スタッフや、制作にご協力いただいたクリエイターにインタビューを行う「スタジオヘッド塩川の創遊話 ~DSS制作スタッフインタビュー~」。
第2回目は、2018年12月に開催された「コミックマーケット95」のディライトワークスブースにて販売した、オリジナル『Fate/Grand Order』グッズ企画開発担当の恩田昌寛が登場。グッズ制作の裏側やコミックマーケット初出展時のエピソードを語った。

2018年冬のコミックマーケット初出展を振り返って

塩川:インタビュー企画「スタジオヘッド塩川の創遊話(そうゆうはなし)~DSS制作スタッフインタビュー~」。今回は「コミックマーケット95」で販売したディライトワークスオリジナル『Fate/Grand Order』グッズをはじめ、商品の企画・開発を担当している「DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios(略称:DSS)」の恩田昌寛さんにインタビューを行いたいと思います。

恩田:今日はよろしくお願いします。あらためて面と向かって話すと、何だか緊張します。

塩川:気楽に何でも話して下さい(笑)。「コミックマーケット95」(※)、あらためましてお疲れ様でした。

※2018年12月29日から31日に開催された。
ディライトワークスが初出展し、『Fate/Grand Order』のオリジナルグッズなどを販売した。(詳細はこちら

恩田:こちらこそ、お疲れ様でした。ディライトワークスとして初の試みでしたから、無事に終わることができてホッとしています。

塩川:どんなグッズが好評でしたか?

恩田:ありがたいことにグッズは全体的にご好評をいただきましたが、中でも『Fate/Grand Order』のアートブック(※)はたくさんのお客さまにお手に取っていただき、3日間を通して完売となりました。

※アートブック『Fate/Grand Order Game Artbook [Event Collections 2018.01 - 2018.08]』は、2018年1月から2018年8月にゲーム内で実施された期間限定イベントを、イベントに登場したキャラクターイラストや設定資料などで振り返ることができるほか、座談会なども収録している。

ほかにも、概念礼装作家さんによる描きおろしイラストのタペストリー、クリアファイルや缶バッジといった定番グッズもやはり人気が集まりました。今回、ラバーストラップと缶バッジは『ぷちサバ!』というディライトワークスオリジナルのSDイラストで制作し、先行販売しました。いつもは格好良いサーヴァントたちがデフォルメされたデザインになっています。こちらは『Fate/Grand Order』のバトルキャラ制作チームのスタッフにより、描きおろしや監修がされています。

塩川:どれも可愛く仕上がっていますね……。(缶バッジを手に取る)

恩田:今回、「コミックマーケット95」に携わるデザイナーは社内で公募しました。そのデザイナーの中に、『Fate/Grand Order』のゲーム内の期間限定イベントなどで登場するデフォルメキャラクターのデザイナーがいて、それを知って商品開発チームでぜひ商品化したいということになりました。そういった経緯もあって、『ぷちサバ!』はディライトワークスならではの『Fate/Grand Order』グッズですね。

塩川:ディライトワークスとして初のコミックマーケット出展を果たしましたが、恩田さんにとってはどんな経験でしたか?

恩田:色々と大変なこともありましたが、当日は大きなトラブルもなく、無事に全日程を終えることができて本当に良かったなと。私も終日ブースにいましたが、お客さまがグッズを手に取ってくださったり、購入したグッズを大事そうに抱えて笑顔で帰って行かれる様子を目にすると、やはり感慨深いものがありました。

その一方で、ブースには多くのお客さまにお越しいただき、待機列も一時は場外まで延びることもありました。寒い中お待たせすることになり、大変申し訳なく思っています。今回の出展は達成感もありますが、反省点も少なからずあるので、今後に活かしていきたいと思っています。

塩川:グッズはその後、事後通販も始まりましたね?

恩田:はい。2019年1月24日(木)にオープンしたディライトワークスの公式オンラインストア「DELiGHTWORKS STORE」(https://store-delightworks.jp/)にて「コミックマーケット95」当日に完売となった概念礼装画集やグッズはもちろん、『ぷちサバ!』のラバーストラップと缶バッジ、そして、こちらのアクリルスタンドとタペストリーなど「コミックマーケット95」で販売した全商品を取り扱っています。

さらに、「DELiGHTWORKS STORE」のオープンに合わせてご用意した『ぷちサバ!』シリーズのイラストを使用したクッションや手帳型スマホケース、湯呑み、どんぶりなど新商品も多数追加しています!

こちらは、「コミックマーケット95」でお買い物されたマスターの皆さまにも、ぜひチェックしていただきたいオススメのラインナップです!!

知られざる商品企画開発の仕事とは

塩川:ディライトワークスでは2018年から自社パブリッシング商品として、画集やボードゲームなどを制作・販売してきました。いずれも初の試みで、2018年はチャレンジの連続でした。

そして、2018年末の「コミックマーケット95」出展プロジェクトでグッズの制作・販売にも初めて挑みましたが、恩田さんはどのように携わられたのでしょうか? 大変だったところなんかも、ぜひ伺いたいです。

恩田:大変だったところ、ですか。それなら「全部」と言っていいくらいかもしれません(笑)。初の試みとあって、社内に商品企画開発・販売の経験者もほとんどいなくて、最初から最後まで本当に大変なプロジェクトでしたから。

塩川:では、このラバーストラップやアクリルスタンドなんかもすべて、恩田さんの努力の結晶ということですね。

恩田:恐縮です。そんな風に思っていただけていたら、うれしいです。

塩川:商品の企画・開発というのは、具体的にどのような仕事をされているのでしょうか?

恩田:まずは商品のアイディアを出すところから始まり、デザインと品質のチェック、商材によっては販売網や物流経路も特別に手配が必要です。細かいところで言えば、イベントでのブースの運営、物販コーナーの装飾やPOPも手掛けていますね。

また、商品の不良品には十分注意を払っていますが、万が一に備えてお客さまへのサポートも整備しなくてはなりません。グッズの企画からお客さまへ商品をお届けするまで、そのすべてを担うのが商品企画開発です。

塩川:先ほど「全部」と言っていたのはそういうことだったんですね。

恩田:とはいえ、私一人で何もかもをこなしているわけではないんですよ。私のチームには数人のメンバーがいますし、「コミックマーケット95」で販売したグッズは「Fate/Grand Order Studio」(※)でバトルキャラ制作チームや、概念礼装などゲーム内のイラストを担当しているスタッフにも制作に携わってもらいました。それにTYPE-MOONさんのバックアップも大きかったですね。

※「Fate/Grand Order Studio」…ディライトワークスの制作部のひとつ。主に『Fate/Grand Order』の開発・運営を行う。

塩川:TYPE-MOONさんの監修によって、良くなった部分の具体例を教えていただけますか?

恩田:はい。アドバイスひとつひとつが非常に勉強になりました。監修していただいたポイントはいろいろとありますが、カドックのアクリルスタンドを制作していた時にTYPE-MOONさんからいただいたご指摘が印象に残っています。

カドックはゲーム中の立ち絵でも右手を胸のあたりにやって俯き加減でやや上方に視線を向けているというポーズです。つまり彼の全身像はやや猫背っぽい姿勢になっていると想像できます。今回のアクリルスタンドは、デザインを起こした当初、バトルキャラの基本姿勢に準じてどのキャラクターも直立で前方を向いた形にデザインされていました。

けれども、カドックだけは「彼らしさを表現するために姿勢をやや前傾気味に」と、TYPE-MOONさんからフィードバックをいただいて、ほかのキャラクターより少しだけ前屈みになるように修正を加えました。そうすると、やはりカドック“らしさ”がグッと際立ってくるんですね。彼のサーヴァントであるアナスタシアと並べてみても、不思議と雰囲気が違って見えてきます。

▲Fate/Grand Order バトルキャラ風アクリルスタンド
(カドック<左> & アナスタシア<右>)

塩川:なるほど。神は細部に宿る、と。

恩田:全くその通りだと思います。

塩川:グッズは、一般的にどのような制作フローを辿るものなのでしょうか?

恩田:では、アクリルスタンドを例にご説明しますね。まず最初に部内で商品企画を検討し、作りたいグッズの概要をまとめます。企画には「作りたい」という気持ちも大切ですが、グッズを通してお客さまにどのような感動や体験を届けたいかが重要です。その後、企画をTYPE-MOONさんにご提案させていただき、ご承認いただいたら、いよいよ本格的な制作が始まります。

アクリルスタンドを作るにはイラストを用意しなくてはいけません。どのキャラクターを起用して、誰に制作をお願いすべきか。これもグッズ制作において重要なポイントになります。今回はサーヴァント以外のグッズも作りたいという意見が挙がっていましたので、主人公や先ほどのカドックをはじめとした『Fate/Grand Order』の第2部で登場するキャラクターを起用することになりました。

そこで、サーヴァント以外の商品をご提供する場合、どういったものであればお客さまに喜んでいただけるかを考えた際、『Fate/Grand Order』の中でも体験したことのない新しい体験をご提供することが重要なのではないかと思いました。
そうした観点から「マスターたちとサーヴァントがバトルキャラとして一緒に並んでいる姿は見たことがない。これであればお客さまに喜んでいただけるのではないか」と思い、プロジェクトメンバーとして参加していた「Fate/Grand Order Studio」のバトルキャラ制作チームのデザイナーに、サーヴァント以外のキャラクターのバトルキャラクター風のイラストを描きおろしてもらうことにしました。

塩川:そこからTYPE-MOONさんの監修へと繋がっていくと。

恩田:はい。

塩川:アクリルスタンドひとつとっても、考えることが沢山あるんですね。

恩田:イラストだけではありません。商品のサイズや素材となるアクリルの厚み、上部に小さな穴を設けてキーホルダーとしても使えるようにするなど、細かな仕様も決めていく必要もあります。そして、納期も。「コミックマーケット95」で先行販売するのですから、何としてもイベント当日までに必要な販売用の在庫を揃えておかなくてはなりません。
納品までの作業スケジュールやコストの管理も商品企画担当の仕事です。

恩田:これまで商品企画開発としてたくさんのグッズを制作してきましたが、お客さまに初めてグッズを手に取っていただく瞬間はいつも緊張します。できあがったサンプルを見る時もドキドキしますね。この段階での善し悪しが最終的なできばえを大きく左右するので。アクリルスタンドもサンプルは厳しくチェックしました。その時のサンプルがこちらです。

塩川:新所長!

恩田:左が実際の完成版で、右がサンプルです。違いがわかりますか。

塩川:うーん……?

恩田:髪の色をよく見てみて下さい。

塩川:左(完成版)の方が色味はハッキリしているような気もしますが、かなり微妙な差ですね。

恩田:正解です。完成版は裏側の白引きが濃くなっており(※)、より鮮やかな発色になっているんです。印刷の都合上、白引きの濃さにも限界がありまして、そこは工場の人達と話し合って可能な限り濃度を高めています。どのキャラクターもこのような細かい調整を入れています。

※白引き…予め白色の下地を印刷し、色味の透過を防止する印刷技術。

塩川:素人目にはほとんど同じに見えるような……。

恩田:そうですね。もしかしたら、最初のサンプルのままでも喜んでいただけるのかもしれません。けれども私は、こうすればもっと素敵なモノになるということを知っているので、よりお客さまに喜んでいただける商品にするために、創り手としてスケジュールが許す限り最後までこだわり抜きたいと思っています。

塩川:こだわる気持ちはわかります。

マスターに愛される“逸品”を創る

塩川:「コミックマーケット95」で先行販売したオフィシャルグッズの中でも、特に恩田さんのこだわりが込められた逸品が、アートブックだと伺っています。サーヴァントごとの詳細なビジュアルデータや各イベントで使用したイラストの掲載、開発スタッフの座談会など盛りだくさんですよね。

恩田:バレンタインの時期に開催された「バレンタイン2018 ~繁栄のチョコレートガーデンズ・オブ・バレンタイン~」では、それに加えて「ピジョンレポート」(※)も網羅しています。「ピジョンレポート」はゲーム内でテロップのようにして流れていくため、改めてじっくりと読めたら喜んでいただけるかと思い掲載しました。ぜひアートブックで振り返っていただければと。座談会は、私も収録時に立ち会いをしていて大変興味深かったです。『Fate/Grand Order』に携わるクリエイターがどのような姿勢、熱いマインドで開発を進めてきたのかがよく分かる内容だと思います。

※ピジョンレポート…2018年1月31日から2月15日まで開催された『Fate/Grand Order』の期間限定イベント「バレンタイン2018 ~繁栄のチョコレートガーデンズ・オブ・バレンタイン~」のイベントアイテム交換画面の上部に表示されたニュース。イベントの進行状況に合わせてユニークなニュースが流れた。

塩川:手触りも高級感があり、装丁にもこだわりを感じますね。

恩田:そうですね。絵本のようなハードカバータイプの上製本という仕様です。このアートブックは書籍というだけでなく、日ごろからゲームを楽しみ、キャラクターを大好きだと思っていただいているお客さまに、“大切な一冊”として長く手元に置いておきたいと思っていただけるようなものに仕上げたかったのです。制作は、途中で全てのページの構成を作り直したりして紆余曲折ありましたが、苦労しただけ良いものにできたと思います。

塩川:試行錯誤の積み重ねがあったんですね。

恩田:当初は1ページに2騎のサーヴァントを掲載するつもりだったのですが、そうするとサーヴァントの掲載サイズが思いのほか小さくなってしまい……。やっぱり細かい所までじっくり見ていただきたいですから、制作の途中で1騎につき1ページを使う構成に思い切って変更しました。

塩川:アートブックのできばえに対する感想は?

恩田:アートブックはですね、サンプルの段階ですでに納得のできで、初めて手にした時は自然に笑みがこぼれるほどでした。

塩川:ニヤニヤするほどに?

恩田:しましたねー(笑)。「これは本当にお客さまに喜んでいただけるに違いない!」と思いました。

塩川:今後はどんなグッズを創っていきたいですか?

恩田:グッズは種類こそ様々ですが、キャラクターグッズとはいえ見た目だけでなく、使い心地が良くて触れた時に嬉しくなるようなもの、使い勝手が良い物を作りたいと考えています。もちろん、驚きやワクワクしていただけるような魅力も重要です。

たとえば、グッズ商品の定番でマグカップがありますが、ただ綺麗なイラストやデザインがプリントされているだけでは良い商品とは言えないと思っています。女性のお客さまにとって使いやすいマグカップとはどのようなものか、男性のお客さまにとっての使いやすさとは。そうやって考えると、容量や重さなどベースにするモデルを選ぶポイントも変わり、仕上がりがおのずと変わってきますよね。

塩川:なるほど。

恩田:ですから、見た目も機能面も優れた、マスターの皆さまに愛される“逸品”を創るというのが私にとって一番の目標になると思っています。グッズはVRやリアルイベントのように迫力のある体験を演出することはなかなかできません。

しかし、缶バッジやアクリルスタンド、アートブックといった様々な形でマスターの皆さまの側に置いていただき、楽しんでいただくことができます。ひとつひとつがもたらす喜びは小さなものかもしれませんが、サーヴァントたちの存在やゲームの世界観を生活の中で感じるというのも、マスターの皆さまにとって大切な体験ではないかと思います。

塩川:商品の企画・開発という面から、「FGOのある生活」を彩っていく、と。

恩田:はい。『Fate/Grand Order』には200騎以上のサーヴァントがいますから、全サーヴァントのグッズ化を目指して、たくさんのマスターの皆さまにもっと喜んでいただけるもの、大事にしていただけるものを創れるよう、頑張っていきたいと思います。

塩川:全サーヴァント……何年越しか(笑)。

恩田:まぁ、千里の道も一歩からと言いますから(笑)。

塩川:そうですね。頑張っていきましょう。

恩田:はい!

DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios